自作M9ダミーマガジン 型取り編

自作M9ダミーマガジン 型取り編

前回の記事でも書いた通り、ギアフェス東北は電車+バス移動のため、荷物は少しでも軽い方が望ましいです。
しかし装備は妥協したくありませんし、かといって余計なコストも掛けたくありません。

そんなワガママをクリアすべく、DIYを実施したので記事にしておきます。

今回、ピストルはマルイのエアコッキングM92Fを持っていきます。
自作M9ダミーマガジン 型取り編

ガスブロは本体重量がある上、ガスも持っていかなければいけません。
荷物を増やす割にゲームで使う可能性が低いので削減対象となりました。

ベルトには3連ピストルマガジンポーチを装備します。
自作M9ダミーマガジン 型取り編

この「中身」が今回の問題です。

エアコッキングのスペアマガジンは持っていませんし、あっても実物より小さいのでマガジンポーチがスカスカになってしまいます。
そもそもエアコッキングピストルの予備マガジンが必要な場面は皆無でしょうし。
かといって本体も無いのに文鎮のようなガスブロのマガジンで埋めるのは、荷物の関係上愚策です。

1本は前回のギアフェスに合わせてマルシンモデルガンのマガジンを調達しています。
自作M9ダミーマガジン 型取り編

ガスブロマガジンよりリアルな外観で軽量なので「アンコ」として非常に優秀です。
ただ実物マガジンより安かったとはいえ、これをあと2本揃えるのは「アンコ」という役割に対して費用対効果が納得いきません。

「ポーチを安く軽く埋めたい」という需要は私だけではなく世の中に一般的にあるようで、AMAZON等で「ダミーマガジン」なる物が沢山販売されています。
自作M9ダミーマガジン 型取り編

SIGがコピー元のようですが、9mmピストルマガジンタイプは3本で1560円也。
「これを買えば解決!」と思いカートに放り込んだ時点で、我が家にある「秘密兵器」の存在を思い出しました。
自作M9ダミーマガジン 型取り編

天下の「おゆまる」様です。
100均で簡単に手に入ります。

熱湯で溶けた飴のように軟化し、冷えるとゴムのように硬化する玩具です。
手芸趣味の世界では、これでアクセサリーを作ったりもするようです。
自作M9ダミーマガジン 型取り編

模型界では「複製の型」に使われる事があります。
複製したい物に軟化したおゆまるを押し付けた状態で冷やすと「型取り」が出来ます。
そしてそれを「型」として樹脂を流し込んで成形すれば、複製できます。

以前少しだけ記事で書きましたが、私はこれでANVISのグラウンドアダプターを複製しました。
自作M9ダミーマガジン 型取り編
自作M9ダミーマガジン 型取り編
左が実物、右がおゆまる複製です。

色なんて気にせず混ぜ込んだので異様なビジュアルですが、おゆまる型はこんな感じです。
自作M9ダミーマガジン 型取り編
自作M9ダミーマガジン 型取り編

レプリカですら1万円は余裕で超える時期に、材料費で言えば200円もかからず複製出来ました。

これが私のおゆまるデビューでしたが、単純な板っぺらのような形状であればズブの素人でも簡単に出来ました。

そこで今回はこの「おゆまる」を用い、モデルガンのマガジンをマスター(原型)として複製を試みます。

用意する物は下記です。
・M9マガジン(原型)
・おゆまる(原型が包み込める量)
・ボウル
・紙コップ
・割り箸
・レジンキャスト
・専用顔料

基本は上記があればマガジンに限らず色々なモノが複製できます。
複雑な形になればなるほど、スキルは要求されますが。

下記に順に工程を書いていきます。

まずはお湯を沸かし、ボウルにあけおゆまるを温めます。
自作M9ダミーマガジン 型取り編

おゆまるが軟化したら取り出し、布巾やキッチンペーパー等で水気を拭き取ります。
自作M9ダミーマガジン 型取り編

水分がおゆまるの中に残ると型取り時に水泡のせいで「鬆(す)」が出来てしまいますので注意です。

軟化したらおゆまるを2つに分けます。
鋳造や射出成形等の知識がある方には常識だと思いますが、成形品を取り出す為に最後に型を開く必要があるので、「型割り」する必要があります。

おゆまるには弾力があり、このおかげで型割りを超適当にやっても大丈夫なので、超イージーモードとなっています。
硬質部材で型を作る場合は「アンダーカット」にならないように型を割らないといけません。
自作M9ダミーマガジン 型取り編

金型から成形品を取り出す際に、型を開く方向のみでは離型できない形状、または状態のことを「アンダーカット」といいます。
冷蔵庫で氷を作る場合をイメージしてみてください。
ペットボトルに水を入れて凍らせた後、ペットボトルを切ったりしないで氷を取り出すのは不可能ですよね。
イメージ的にはこれが「アンダーカット」状態に近いです。
氷を取り出すためには、ペットボトルを上下か左右に引っ張って抜けるように切り分ける必要がありますね。
この分ける事が「型割り」といったところです。

しかしおゆまるは弾力があるので、多少のアンダーカットがあっても、型であるおゆまる自身を曲げることで「無理抜き」できます。
通常は成形品の弾性を利用してアンダーカットを強引に抜くことを「無理抜き」と言います。
自作M9ダミーマガジン 型取り編

このブログではかつてないほどアカデミックな文章になってしまいましたが、要は「おゆまるはイージーモード」ということです。
おゆまる型は壊れてしまっても、また熱湯に漬ければ無限に無料でコンティニュー可能です。

ちなみに単純な上下型割りで成形できないような複雑な形状の金型は「スライド」なる部材が複雑に交わり型割りされます。
自作M9ダミーマガジン 型取り編

「パーティングラインがー」というのはよくトイガン話でも出てきますが、このライン=型が割れている箇所です。
自作M9ダミーマガジン 型取り編

トイガン業界はあんまり工夫されていない印象で(型費削減?ノウハウ不足?)、結構堂々と目立つ位置にパーティングラインが入ったりしますが、プラモデルは相当気を遣って各社工夫されているように思います。
ガンプラも日進月歩で様々な工夫が凝らされており、日本のものづくり根性が伺えます。
ガンプラの金型図面と成形現場は一度この目で見てみたいものです。

サバゲーマーに身近なG-SHOCKのベゼルやバンドも、プラモデルと原理は同じです。
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あんな複雑怪奇な形をウレタンで成形するので、まあ複雑な金型ですね。
しかも「腕時計」というファッション要素も兼ね備えるアイテムなので、バリやパーティングラインの外観も要求水準は高いことが容易に想像できます。

おゆまるがすっかり冷めてしまうほど話が脇道に逸れてしまいましたが(笑)、そろそろ工程に戻ります。
2つに分けたおゆまるを温かいうちにマガジンに押し付けていきます。
この時、注意点は3つあります。

1つ目は、2つのおゆまるを密着させることです。
おゆまる同士で隙間があると、後で樹脂を流し込んだ際にそこから漏れます。

2つ目は、樹脂を流し込む「口」を空けておくことです。
自作M9ダミーマガジン 型取り編

専門用語で言うと「ゲート」ですね。
後でここから樹脂を流し込みます。
この部分は原型を転写できず、成形樹脂はゲートの形で成形されるため、ゲートは可能な限り小さい方が望ましいです。
プラモを作ったことがある方は、「ランナーと部品が繋がっている部分」と言えば分かるでしょう。
自作M9ダミーマガジン 型取り編

ここをニッパーで切り離したり、切り離した後、残った出っ張りをデザインナイフやヤスリで「ならす」必要がありますよね。

プラスチック製品はパーティングラインとゲート跡を見れば、大体どんな金型なのか想像できます。
世の中のモノがどうやって作られているのか?考えるのは楽しいですよね。
銃なんかはきっと独自のノウハウだらけで、とても面白そうですよね。
一度でいいからどこかの工場を見学してみたいものです。

3つ目は、おゆまるの「肉厚」です。
おゆまるは先述の通り、温度で軟化します。
家庭で使うようなレジンキャストは硬化時に「発熱」するのが一般的という認識です。
後述しますが、私が使用する「Mr.キャスト」は一時的におゆまるを軟化させる程の熱を発します。
自作M9ダミーマガジン 型取り編

軟化したおゆまる型に穴が空いた日には、あっつい樹脂がドロッと流れ出したと思うと、すぐ硬化して床等に張り付きます。
軽く火傷するわおゆまる型はダメになるわ後始末が大変だわで大惨事となりますので、おゆまる型はけちらず分厚く作ってくださいね。

上記3点に注意しつつ、おゆまる型を1個ずつ順に作っていきます。
まず一方のおゆまるをマガジンに押し付けていきます。
自作M9ダミーマガジン 型取り編

大体マガジンの半分を覆ったら、冷えて完全に固まるまで待ちます(冷蔵庫に入れると早いです)。
固まったら、そのまま2つ目のおゆまるを押し付けていきます。
自作M9ダミーマガジン 型取り編

2つ同時にやるとおゆまる同士がくっついて一体化してしまう為、1つずつ処理していきます。
2つ目も冷えて硬化したら型を開き、原型のマガジンを取り出します。
自作M9ダミーマガジン 型取り編

これでマガジンの「成形型」が完成しました!
次はこれに樹脂を流し込んで成形していきます。

今回はクソまじめな話で無駄に長くなってしまいましたので、「成形」「仕上げ」に関しては次回に持ち越そうと思います。
お読みいただきありがとうございました。




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2018年05月24日 Posted by 4039  at 22:39 │Comments(0)装備自作,DIY100均

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