初期アフリストコンパス 再考編
この記事で当ブログの記事数が200記事になりました。
2017年の5月に始めたので、平均で1ヵ月6記事弱書いている事になります。
平均1週間に1記事以上書いていたとは、自分でも驚きです。
昨年中国在住になってからはペースが落ちましたが、これからもなるべくコンスタントに続けて行こうと思います。
コロナウイルスの影響で、ネトフリやアマプラの「話題の映画」的なカテゴリに感染モノがちょいちょい並んでいます。
映画通の盟友Bucket Head氏のすすめもあって、邦画「復活の日」を観てみました。
生物兵器として開発したヤバい致死性でヤバい繁殖力のウイルスが事故で外界にバラまかれ、ウイルスの活動できない南極に残った1000人弱以外の人類は死滅してしまい...。という内容です。
いかにも昭和な演出&ご都合主義な展開はまあご愛敬として、めちゃめちゃ金の掛かったシーンの数々は、今のCG成熟期で肥えた目で見ても見ごたえ十分です。
本当に南極で撮影し、本物の潜水艦やら大型船舶も出てきます。
40年前の映画ですが、俳優、製作陣もアラサーの私ですら知ってるような超有名人ばかりで豪華です。
主役の草刈正雄は今でも超渋カッコイイので、40年前の20代の若々しい御姿は推して知るべしですね。
パンデミック物としてはハリウッド映画「コンテイジョン」とかの方が何倍もリアルなストーリーですが、もし今流行っている新型肺炎が致死率100%だとしたら世界はどうなっちゃうんだろう、と想像してしまいました。
長尺ですが話としては意外と
それでは本題に入ります。
ODA961の初期アフミリフォトに登場しているSilvaのリストコンパスについてです。
最近腕に巻くガジェットの事ばかり書いていますね。
過去ミリフォトから考察し自作し、最終的に新品を手に入れたSilvaのリストコンパスについて、今回新たに考察を進めましたので記事にしておきます。
過去の経緯は下記リンクからご覧ください。
「初期アフ リストコンパス問題」
「初期アフリストコンパス 加工編」
「初期アフリストコンパス問題 解決編」
「初期アフリストコンパス問題 解決編PART2」
先日、何気なくネットを徘徊していると下記写真を発見しました。
SUUNTOのM9コンパスですが、金属製の留め具が付いています。
M9と言えばベルクロ留めが一般的ですよね。
SILVAのコンパスの同じくベルクロ留めしか確認できていません。
たしかナイロンが気になる年頃なんです(仮)。のリコさんも「ベルクロじゃないやつ」をお持ちというコメントを以前いただきました。
現行がベルクロなので、この留め具付きはベルクロ仕様の前にあったと考えるのが自然です。
以前私は、「先にSILVAがこのコンパスを製造販売していて、何かの理由で製品権をSUUNTOに譲渡されたのでは?」と考察しました。
しかし、そうなるとこの留め具仕様のM9の存在が矛盾してしまいそうです。
そこで、これをきっかけに再度このコンパスについて調べを進めてみました。
今回調査して新たに分かった事を書いていきます。
まず、このSilvaコンパスのモデル名が判明しました。
「424」という型番で売られていたようです。
いくつかの販売サイトで確認したので、おそらくあっていると思います。
(残念ながらどのサイトもかなり古く、当然販売はしていませんでした)
次に、海外のとあるフォーラムででこのコンパスの出自についての言及を発見しました。
下記、画像の文章抜粋です。
Silva USA/Silva Canada: Johnson Outdoors has owned the soleright to market Silva brand name compasses in North America (this includes Canada) since 1998.
The original Swedish-made Silvas are no longer sold in the U.S. or Canada, except through gray-market channels.
At first, Johnson Outdoors sourced many of its Silva-branded compass models from Suunto.
However, this practice largely ceased several years ago (some discontinued models may still be around,
like the Silva 424 wrist sighting compass which Suunto made based on their M-9 wrist compass).
ちなみに同じような内容を他のフォーラムでもいくつか見かけました。
以前の記事でも、北米のSilvaの商標はJohnson Worldwide Associate(1999年よりJohnson outdoorsに改編)が持っていたと書きましたが、この記述ではJohnson Worldwide associateは1998年からだとあります。
この内容はwikipediaにも記載がありますね。
また、Johnson OutdoorsはSUUNTOのモデルをSilvaブランドとして展開していたとあります。
例として、424コンパスはM9コンパスを基に作られていると触れています。
この言及が正しければ、やはりM9が先に誕生していて、1998年から数年間は北米向けのみにSilva424が並行生産されていた事になります。
私はこの内容は正しいと考えました。
その裏付けとして、下記項目があります。
1.金属留め具M9の存在
最初に書いた通り、ベルクロ留めのSilvaコンパスより明らかに古いと思われる金属留め具のM9も裏付けになります。
このことから、先にM9があった可能性が高いです(Silva424の金属留め具バージョンもあるかもしれませんので、断定はできませんが)。
2.金型とFINLAND刻印
以前記事で書きましたが、M9とSilvaの各部の金型由来と思われる形状(バリやヒケ、成形傷)からも、同じ金型で作られていた可能性が高いです。
M9
424
そして、リコさんのコメントでは、所有されているM9の中には足裏の「FINLAND」刻印が無い個体も存在するとのことでした。
先述の金属留め具バージョンも「FINLAND」刻印は無いように見えます。
この刻印は凸刻印なので、後から金型を掘れば比較的容易に付け加えられます。
なので、Silvaよりも先に「FINLAND」刻印無しバージョンのM9が存在した可能性が高いです。
そして、先ほどのフォーラム文にこんな事が書いてありました。
Suunto-made Silva compass packages usually state 'Made in Finland' or have a Finnish flag on the package.
ここから、Johnson outdoorsがSilva424を北米で発売する際に、MADE IN FINLANDを強調する為にSUUNTOに依頼して「FINLAND」刻印を追加させたのかも、とも想像しました。
3.文字板の出っ張り
M9、424共に、文字板の裏側に出っ張りがある個体と無い個体が存在します。
左M9、右424。両方出っ張りあり。
424。出っ張り無し。
あと写真はありませんが、リコさん所有の個体で出っ張りの無いM9があるそうです。
最新のM9には出っ張りがありますので、どこかの時期で金型に出っ張り(金型上は凹み)を追加したのだと思われます。
そうなると、M9も424も出っ張り追加の時期を跨いでいた=同時に並行して作られていたと考えられますね。
4.Silva刻印
しかし、「M9が先に存在し、途中一時期Silva424が並行して同時に作られていた」と結論付ける為には、ひとつ引っかかる点がありました。
これも以前の記事で言及し、Silvaが先に存在したのでは?と私が考察した基になった要素です。
金色に輝く「Silva」刻印です。
拡大して見ると凹んでいるので、金型で成形時に刻印を付けているのであれば金型は凸になります。
先ほどの「FINLAND」は金型凹なので後加工可能ですが、凸加工は非常に困難ですし、したとしても痕跡が見えるはずです(入れ子線等)。
したがって、もし成形時に刻印を入れていたとなると、先に「Silva」刻印があってそれを途中で削除したと考えないと矛盾してしまいます。
上記フォーラム文や留め具、FINLAND刻印を鑑みるとこの刻印の矛盾だけ解せません。
そこで、刻印は成形では無く、成形後の後加工で入れている可能性を探ってみることにしました。
すると「デボス加工」なる刻印手法が見つかりました。
クレジットカードや銀行カードによく用いられる加工で、製品に熱を掛け箔を押し付けると同時にその部分を凹ませるという加工手法のようです。
Silva424もこれと同じかはわかりませんが、成形後に刻印が施されていると考えると全て合点がいきます。
さらに、リコさんのコメントでは、私の個体とリコさんの個体ではSilva刻印の形状が少し異なるようです。
射出成形後の後加工であれば比較的バラつきが大きいと想像できるので、両者を見比べればこれもひとつの裏付けになるかもしれません。
以上が今までの考察を含めた最新の私の考察です。
長々書きましたが、最後に簡潔にまとめておきます。
・このコンパスのモデル名は「424」
・M9が先に存在し、1998年以降の一時期Silva424が並行生産され、北米に展開されていた
というわけで、頑張ってSilva424を探さなくても、9.11以降の装備であれば旧型文字板SUUNTOで問題無しだと思われます。
旧型文字板SUUNTOも既に生産終了していて年々プレミア価格が上がっていくのは必至なので、手にするなら今の内だと思います。
あとはどの時点で留め具が無くなりベルクロ仕様になったか分かれば完璧ですね。
これからも引き続き研究を続けたいと思います。
現在、「BACKPACKER」誌の98年付近のバックナンバーを片っ端から読み漁って424かM9が出てこないか探しています。
まだこの内容に対しては収穫無しですが、副産物的に色々なアイテムの情報を入手できているので、また別の機会に記事にしようと思います。
ちなみに前回の「パスファインダー騒動」の発端となった広告は、このコンパスを調べていた時に見つけた副産物です。
知らない事は詳しい友人知人に聞いて教えてもらうのは一番の近道ですが、自分で頭を抱えて試行錯誤して寄り道して深堀りしたりして、情報が枝分かれして知識が咲いていくこの感じが私は何より楽しいです。
また、こうして自分自身で導き出した知識はかけがえのないものだと思えます。
今はネットで基本どんなことでも調べる事が出来ると思いますが、どう調べるか?調べて出てきた点と点で線をイメージできるか?はまだまだ人それぞれの思考力や記憶力に依存していると思います。
今回は今まで知らなかった新たな「点」がいくつか出てきたことで、今まで描いていた「線」が変わりました。
ネットや書籍で知り得る単一的な情報はあまり有意義な知識ではなく、あくまで知識を紡ぐ「道具」であることが多いと思います。
日々便利になる道具を活かして、より有意義な知識を紡いでいけるようこれからも精進しようと思います。
お読みいただきありがとうございました。
初期アフバックパック UM21 PART2
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今回も深い観察眼と考察力には脱帽です。
私の「お買い物ブログ」との差を感じ、私ももう少し深く考察したいと思いました。(>_<)
旧タイプM9を2つ所持しているので、確認しましたが、両方ともFINLAND刻印有りでした。
文字盤の出っ張りについては、1つあって1つはありませんでした。
また機会がありましたらアップします!
お褒めのお言葉、恐縮です。
いえいえ、私がただ時間を持て余した暇人なだけです(笑)
情報ありがとうございます!
ちなみに両方ともベルクロバンド仕様でしょうか?
今、以前AKIさんが書かれていたSUUNTO VECTORについて私も記事書いています。
近日中にアップすると思いますので、何かお気づきの点やご指摘があったらコメントいただければ幸いです。
ブログに写真アップしましたので、お時間の空いた時にでも見て下さい。
真ん中の茶色い金具に付いている錘?も私の個体と形状と配置が違いますね。。
裏側の変遷は奥が深そうです...。
既にご存知かとは思われますが、磁気伏角の補正用です。
北極へ近づくと北針が地面へお辞儀してしまうので南針に錘を着けてバランスを取ります。
スント公式サイトに記載があります。
https://www.suunto.com/ja-jp/Support/Compasses-feature-index/-1/
こちらの工具店のページ下に書かれた磁気傾斜補正の図が分かり易いです。
http://www.ys2000.net/se/com/shousai/kb14360r/
錘が金具の端に装着された物は第一地帯の北米ヨーロッパ用で、
錘が金具中央よりに装着されたのは第二地帯の日本アジア用だと推測します。
金型の傷とヒケを見つける観察眼に驚嘆したので思わずコメントしてしまいました。
コンパスにはそんな補正があるんですね!
恥ずかしながら知りませんでした。
大変勉強になりました、ありがとうございます。
またひとつ、このコンパスの謎が解けて嬉しい限りです。
細々したモノを作る仕事をしていますので、もう職業病みたいな感じです(笑)